【大衆車が標的に?】恐ロシア再び。ヤリスやフィットが盗難車上位になる可能性!
掲載 carview! 文:編集部 49
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日本政府は今年8月にロシアに対する輸出禁止措置を拡大し、新たに排気量1900cc超の自動車(ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車)などが輸出禁止の対象となった。実は、日本の中古車輸出先としてロシアは世界第1位の相手国。
しかも、盗難ランキング上位車種が彼の国では大人気と来ている。今回はこの強化された輸出規制が中古車市場や盗難発生状況にどんな影響を及ぼすのか考えていこう。
まず、ロシアに対する中古車輸出の現状を確認すると、昨年1年間で20.5万台が海を渡っており、金額ベースでは約2500億円の取引がある。参考まで一昨年の輸出台数は15.3万台だったから、ウクライナ侵略という出来事があったにもかかわらず、対露輸出は台数ベースでおよそ33.5%も増加しているのが実態なのだ。
これは、欧米の経済制裁等によりロシア国内で新車生産が滞る中、品質や価格面で評価の高い日本の中古車に人気が集まっていることが背景にある。もちろん、日本も基本的に欧米と横並びで経済制裁を行っており、昨年4月5日からはロシアに対する中古車輸出に一定の制限を設けた。
<写真:トヨタ ランドクルーザー300>
ただ、その対象は600万円超の高級車に限られていたため、皮肉にも同年6月以降、ロシア向け中古車輸出台数は1年以上連続して対前年同月を上回り続け、世界から白い目で見られていたのだ。
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当然、こうした対露輸出の急増は日本国内中古車市場にタマ数不足をもたらし、同時期に半導体不足で新車供給が滞ったことも重なり、昨年9月に国内中古車市場の平均単価は過去最高の122万1000円を記録した(中古車競売大手ユー・エス・エス調べ)。
足下で異常とも思える中古車価格の高騰は落ち着きを見せているが、それでも今年7月の平均単価は106万6000円と、コロナ禍前に比べ5割以上高い水準となっている。
では、今回の輸出規制強化により対露中古車輸出はどの程度減少するのだろうか。ここで、昨年の輸出台数を排気量別に見ると、今回の規制対象となる排気量1900cc超の車両はおよそ半分強を占める。逆に言うと、20.5万台の半分弱に当たるおよそ10万台は規制強化によってもなお輸出は可能ということだ。
さらに、これまで大排気量車を購入していた層の一定割合は、規制強化を機に輸出規制を免れる小さい排気量の車種に選好をシフトさせるだろうから、実際の輸出台数は4割減程度にとどまる可能性がある。なお、映画などのイメージだとロシアでは高級車が好まれる印象があるが、実のところ排気量1500cc以下の小型実用車も非常に引き合いが強い。
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もちろん、4割減というのはかなり大きな数字だから、仮にこの見立てどおりに対露中古車輸出が減った場合、中古車市場はそれ相応の影響を受けるだろう。特に、ロシア向けに輸出できなくなるのは排気量が一定程度大きく相対的に高価な車両なので、そうしたモデルが国内の中古車市場に流入し、個体数が増えれば相場を押し下げる効果はあるはずだ。
ただし、先に書いたとおり、今の中古車平均単価はコロナ禍前を大きく上回っているから、少々値下がりしたとしても多くの人にとってお買い得感のある水準とはならない可能性が高い。そうしたことを踏まえると、中古車価格が数年前の水準に戻ってから買おう、と狙っている人は、今乗っているクルマの維持費と乗り換えの損得をよくよく吟味した方がいいかもしれない。
ここでもう一点、ロシアとは離れて今後の中古車価格に影響を与えそうなのが、昨今取り沙汰されている大手中古車販売店にまつわる騒動の余波。つまり、これまで存在感が高かった大口の買い手が不在になり、さらには手元資金確保の必要性から在庫車の放出を迫られることで、中古車市場に車両がダブついて値下がりする可能性があるのだ。そのため、この騒動ついては、もう少し先行きを見極めてもいいかもしれない。
ほかにも、半導体を始めとする部品不足が緩和し多くの新車モデルで供給が回復したことも、新車乗換えによる中古車供給を後押しし価格の低下を促すとみられる。なので、自分の狙っているモデルの新車が順調に納車されているかどうかは、目を光らせるポイントだろう。
次に、対露輸出規制強化による盗難発生状況への影響を考えてみたい。最初に断っておくと、当然ながら国内で盗まれた車のすべてがロシアへ輸出されるわけではない。ただし、車台番号等の管理が厳しく警察の目が光る日本で、盗んだクルマを普通に中古車として売り現金化するのは至難の業。
そのため、車両を解体して部品としてバラ売りするのでなければ海外に流してしまうのが手っ取り早く利幅も大きい。となると、中古車輸出台数1位のロシアがやはり盗難車市場として大きなウェイトを占めていると見るべきだ。
ここで直近2022年の盗難被害を車種別ランキングで見ると、1位「トヨタ ランドクルーザー(プラド含む)」(450台)、2位「トヨタ プリウス」(282台)、3位「トヨタ アルファード」(184台)となっている。この3車種は例年ランキング上位の常連で、特にランクルはそれ程タマ数が多くない車種にもかかわらず、昨年も1位(331台)、一昨年は2位(383台)と、全く嬉しくない人気ぶりだ。なお、ランキングTOP10は3年連続ですべてトヨタ車(レクサス含む)となっており、販売台数だけでなく盗難面でもトヨタ一強は揺るぎない。
<写真:トヨタ アルファード(現行モデル※撮影:編集部)>
とここまで読んで、クルマ好きなあなたはピンときたはずだが、上記TOP3は全て今回の規制強化によりロシアへ輸出できなくなる。と言うのも、ランクルは排気量1900ccには到底収まらないし、プリウスはHV専用車、そしてアルファードも初代以来1900cc以下のエンジンを積んだことはないからだ。
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ということで、これまでの600万円超えという規制基準では、新車同様のランクルやアルファードで、かつ最上級グレードでなければ自由に輸出できたところが、一気に制約が強まったというのが実情と言える。
念のため2022年の盗難ランキング4位~10位をつぶさに見ても、強化後の規制に該当せずロシアへ輸出できそうなのは9位「トヨタ C-HR」(43台)だけで、しかも売れ線のHV車は除外される。
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こうなると、2023年以降は盗難被害ランキングに変化が起こる可能性が考えられる。具体的には「トヨタ ヤリス」、「ホンダ フィット」、「スズキ スイフト」などのBセグメントのガソリン車が今後はランキング上位に浮上する可能性が考えられる。なぜなら、こうしたコンパクトカーは低価格ゆえに盗難防止対策も高級車ほど万全ではなく、グローバルに販売されているため現地での知名度も高く販路も容易に見つかるだろう。
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そして、何より日本国内では非常に一般的な車種だからオーナー自身に盗難への危機感が乏しく、犯人側からすれば非常に盗み易い状況にあると思われるのだ。なので、もしこの記事を読まれている方がこうしたモデルを持っているなら、これからは少し危機感を強めた方がいいかもしれない。
以上、今般のロシアに対する中古車輸出の規制強化が中古車市場や盗難発生状況に与える影響を予想してみた。あくまでもこれは想定されるケースの一つだが、是非、乗り換え検討や被害対策の参考にしていただければ幸いだ。
写真:トヨタ、ホンダ、スズキ
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